仕事のストレスにより体調を崩す薬剤師は後を絶ちません。
体やメンタルの不調を感じてはいませんか?
長時間労働や業務内容、人間関係などのストレスはありませんか?
体調が悪い中、無理して働き続けるべきではありません。
仕事がつらい薬剤師さんは休職を考えましょう。
そんなときに重要なのが、傷病手当金の存在です。
傷病手当金は、労働者が病気や怪我によって働けなくなった際に支給される給付金のことで、薬剤師ももちろん受給できます。
私自身、心身の不調から休職を経験しました。
傷病手当金を受給できたため、経済的な不安もなく、
ゆっくりと休むことができました。
本記事では、私自身の経験から、
薬剤師が休職時に知っておきたい傷病手当金に関する条件や申請方法について詳しく解説します。
休職・退職・転職について悩んでいる薬剤師さんはこちら
休職中の薬剤師の給料について
まず、気になるのが「休職中に給料はもらえるか?」ということだと思います。
答えとしては「職場によります」。
ただし、休職中の給料は「もらえないことが一般的」なようです。
休職中の薬剤師が、給料をもらえるかは所属している会社・病院の就業規則によるからです。
休職制度は、法律上の必須制度ではないため休職制度自体がない職場もあります。
自分の職場の就業規則で以下を必ず確認しましょう。
- 休職制度はあるのか
- 休職制度を受けるための(職場特有の)条件
- 休職中給与はもらえるか
- 休職期間の制限
傷病手当金とは?薬剤師も利用可能な給付制度
休職期間中、給与がもらえないからといって絶望しなくても大丈夫です。
健康保険の被保険者であれば、手当を受けられる可能性があります。
傷病手当金の概要と薬剤師への適用
傷病手当金は、健康保険制度を通じて提供される給付金の1つです。
薬剤師もこの制度の対象となり、業務外の理由による病気や怪我によって仕事ができなくなった際に給付を受けることができます。
これにより、健康な状態に戻るまでの間、経済的な安定を保ちながら休養することができます。
傷病手当金の支給条件:注意すべきポイント
支給される4条件
傷病手当金は、以下の4つの条件をすべて満たしたときに支給されます。
業務外の病気やケガで療養中であること
傷病手当金は、仕事以外での病気やケガが対象になります。
仕事や通勤での病気やケガであれば労災保険の給付対象です。
入院していても自宅療養であっても受け取れます。
ここで、このような疑問が浮かぶ方もいるのではないでしょうか?
仕事のストレスが原因でうつ病や適応障害になったんだけど…
傷病手当金と労災、どっちなの?
仕事が原因での発病と認められれば、労災になる可能性はあります。
しかし、精神疾患が「仕事・職場が原因」と認められるのは、一般的にハードルが高いと言われています。
「業務上の負荷」が原因である根拠を資料をもって提出する必要が出てきます。
【発病前の約6か月間に業務による強い心理的負荷(長時間労働・重大なミスの事後対応・いじめを受けた・セクハラ・パワハラなど)が認められるという根拠(タイムカードや会話の録音など)】を提出し認められなければいけません。
根拠がなければ、基本的には傷病手当金の対象になりそうですね。
療養のための労務不能であること
病気やケガにより、今までの仕事ができない場合は「労務不能」とされます。
「労務不能」の判定は
- 医師の判断に基づいた医師の診断書
- 業務の内容(勤務先の証明)
などから健康保険組合が判断します。
連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること
「連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること」が条件になります。
1日目→病気やケガで仕事を休んだ初日
1~3日目(連続して休んだ3日間)→待機期間
4日目以降→傷病手当金の支給対象
待機期間は有給休暇・公休日(土日・祝日等)も含まれ、「連続した3日間」であることが重要なポイントです。
給与の支払いがないこと
傷病手当金は「働けなくなった被保険者の給与がもらえない期間」の生活費を保障するものです。
そのため、就業規則により休職中に給与がもらえるケースや有給休暇で給与が出ているケースには支給されません。
支給されない4ケース
他の公的保障を受給している場合は、傷病手当金が支給されないケースもあります。
全く受け取れなかったり、一部しか受け取れなかったりする可能性があります。
上記に当てはまっている場合でも、ケースによっては差額分が支給される可能性があります。
傷病手当金がどれくらいもらえるのか確認しておきましょう。
傷病手当金を申請する流れと申請方法
病院に受診し診断を受ける
傷病手当金を受給するには、医師から「病気やケガで働けない状態」であるという診断を受けなくてはなりません。
会社に休職の必要性を報告するためにも、医師に休職の相談をして「診断書」をもらっておくとスムーズです。
会社(病院)に療養が必要なことを報告し休職する
休職が必要である旨の、医師の診断書を提出し、会社に療養が必要であることを報告します。
長期欠勤が必要であることを伝え、休職制度の希望を申し出ましょう。
傷病手当金支給申請書を取り寄せる
傷病手当金を申請するには傷病手当金支給申請書が必要になります。
傷病手当金支給申請書を取り寄せましょう。
会社(病院)が慣れていれば、
傷病手当金申請に必要な書類や申請方法の書類を用意してくれる可能性が高いです。
私が所属していた会社は、休職を申請したら
傷病手当金の案内や申請書をまとめて送ってくれました。
職場が用意してくれない場合は、自分で用意しましょう。
全国健康保険協会のホームページでダウンロードできます。
「被保険者記入用」を作成する
傷病手当金支給申請書のうちの「被保険者記入用」(2枚)を自分で作成します。
「被保険者記入用」には以下について記入します。
- 被保険者(申請者)の情報
- 振込先指定口座
- 仕事の内容
- 療養した期間(申請期間)
- 病気やケガについて(傷病名・初診日・傷病の原因など)
- 確認事項(報酬・年金・労災などを受けていないか)
記入例は全国健康保険協会のホームページから確認できますよ!
医師に「療養担当者記入用」の記入を依頼する
傷病手当金支給申請書のうちの「療養担当者記入用」(1枚)の記入を医師に依頼します。
書類作成には1~2週間程度かかることが多いです。
「療養担当者記入用」には以下について医師に証明してもらいます。
- 労務不能と認めた期間
- 傷病について(傷病名・症状・経過・治療内容・検査結果など)
- 発病または負傷について(原因・日付)
- 受診について(初診日や労務不能期間の受診の有無)
会社に「事業主記入用」の記入を依頼する
傷病手当金支給申請書の「事業主記入用」(1枚)の記入を会社に依頼します。
「事業主記入用」には以下について会社から証明してもらいます。
- 申請期間の勤務状況
- 申請期間の賃金支払い状況
傷病手当金の支給申請をする
傷病手当金支給申請書の4枚全てを用意できたら、保険者に申請書を提出し支給申請します。
支給申請は会社経由で行うのが一般的です。
会社が行わない場合は、本人が直接郵送しても問題ないです。
私が申請した際は、
「被保険者記入用(本人記入)」と「療養担当者記入用(医師記入)」をそろえて会社に送ったら、会社が「事業主記入用(会社記入)」と合わせて支給申請してくれました。
支給申請は1ヵ月に1度(給料の締切日ごと)行うのが一般的ですが、あとでまとめて申請しても問題ありません。
私は、休職期間の数か月分をまとめて申請しました!
注意点としては、
過去の日付しか申請できないことです。
例えば、4/1~4/30の傷病手当金は5/1以降に支給申請することになります。
「申請期間の最終日」の後に、医師→会社の順で記入を依頼すればスムーズです。
傷病手当金としてもらえる額は?いつ振り込まれる?
傷病手当金の支給額はおよそ標準報酬日額の2/3
傷病手当金の1日あたりの支給額は、
「傷病手当金の支給開始日の属する月以前の直近の協会けんぽの被保険者期間(任意継続の期間を含む)で継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30 分の1に相当する額の3分の2に相当する額」
とされています。(全国健康保険協会:傷病手当金について より)
つまり、およそ標準報酬日額の2/3もらえるということですね。
今までの給料の2/3程度を傷病手当金として受け取りながら、お休みできるというのは、経済的な不安がかなり薄れるのではないでしょうか。
貯金を切り崩すことなく、治療に専念できますね!
ちなみに、給与や手当が支払われている場合は、支給額から差し引かれます。
支給額以上の給与や手当が支払われているときは、その間、不支給となります。
申請してから2週間~3ヵ月程度で振り込まれる
申請してから、振り込みまでは2週間~3ヵ月程度かかるようです。
勤務先会社や保険者にもよります。
書類に不備があれば、さらに時間がかかります。
私が申請した際は、書類に不備がなかったため
申請してから1ヶ月半程度で振り込まれました。
傷病手当金がもらえる期間は?
支給開始から1年6ヵ月
傷病手当金は支給が始まった日(支給開始日)から支給期間(実際に支給された期間)を通算して1年6ヵ月の期間を限度として、支給されます。
休職する薬剤師は傷病手当金を申請しよう
体調を崩し、仕事を休む選択をする薬剤師は以外にも多いです。
そんな時、傷病手当金をうまく活用することで、お金の心配をすることなく治療に専念することができます。
本記事の傷病手当金の受給条件や申請方法を理解しておけば、もう大丈夫。
無理せず、ゆっくり休んでくださいね。