この記事を読めば
- 特定理由離職者になるにはどうしたらいいかわかる(手続きの方法・流れ)
- 証明書の書き方・注意点がわかる
- 特定理由離職者のメリット・デメリットがわかる
うつ病や適応障害によって退職した場合、特定理由離職者として認められる可能性があります。
薬剤師として働く私も、人員不足と過労により適応障害を発症し、特定理由離職者として失業保険を受給した経験があります。
この記事では、特定理由離職者として失業保険を受給する方法について詳しく説明しています。
そもそも失業保険とは
雇用保険に入っていた労働者が失業した場合に、
再就職までの間、一定の給付金を受けられる制度のことです。
仕事を探している間は、国から給付金がもらえます。
失業保険を受けるには一定の条件を満たす必要があります。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
自己都合退職でも失業手当がすぐもらえる特定理由離職者とは
特定理由離職者とは、「病気やケガなどのやむを得ない理由で自己都合退職した人」や「期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職した人」が該当します。
特定理由離職者と特定受給資格者の違い
特定理由離職者と特定受給資格者は、退職理由によって判断されます。
特定理由離職者 | 特定受給資格者 |
---|---|
・期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職 ・その他やむを得ない理由により離職 | ・倒産、解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕がなく離職 |
(例) ・病気やケガにより離職 ・妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険の受給期間延長措置を受けた ・家族の介護のために離職 ・配偶者の転勤のため離職 など | (例) ・長時間の時間外労働で離職 ・賃金が支払われなかったため離職 ・賃金を著しく下げられたため離職 など |
どちらもやむを得ない理由での離職という共通点がありますね。
そのため、特定理由離職者と特定受給資格者は失業保険を受給する上での給付制限がなくなります。
つまり、すぐに失業手当を受給することができます。
ハローワークのサイト(特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要)で細かい範囲と判断基準を確認することができます。
うつ病・適応障害で退職した人は特定理由離職者として認められる
うつ病や適応障害などの理由で退職した人は、特定理由離職者として認められる可能性が高いです。
「体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した」正当な理由のある自己都合により離職した者
として判断される可能性が高いためです。
特定理由離職者と認められるには医師の診断書(傷病証明書)が必要
医師からの証明が必要な理由
病気やケガを理由に退職した人が特定理由離職者として認定されるためには、医師からの証明が必要です。
特定理由離職者に該当するかの判断はハローワークが行います。
離職理由は、事業主が主張する離職理由+離職者が主張する離職理由を把握し、それぞれの主張を確認できる資料による事実確認を行った上で判定されます。
そのため、病気やケガのために退職したという医師からの診断書(傷病証明書)を書いてもらう必要があるのです。
ハローワークに提出する傷病証明書とは
特定理由離職者として認められるために医師に依頼する証明書は、「傷病証明書」といいます。
(「傷病証明書」は、ハローワークにより「病状証明書」、「主治医の意見書」、「就労可否証明書」、「就労可能等証明書」などと呼ばれることもあります。)
この書類により、
- うつ病や適応障害によりやむを得ず退職したこと
- 今は問題なく働けること
を証明します。
傷病証明書は、ハローワークで手続きを行い受給資格が決定するともらうことができます。
傷病証明書を受け取ったら、主治医に記載を依頼しましょう。
特定理由離職者のメリット
特定理由離職者として認定されると、失業手当を受給する上でいくつかのメリットがあります。
給付制限期間がない
先ほどもご紹介したように特定理由離職者は給付制限がないため、すぐに失業手当を受給できます。
支給の開始タイミングは以下のようになっています。
離職理由 | 解雇、定年、契約期間満了 | 自己都合、懲戒解雇 |
---|---|---|
支給開始 | 離職票を提出し、求職申し込みをしてから7日間の待期が経過した後 【受給資格決定日から7日経過後】 | 離職票を提出し、求職申し込みをしてから7日間の待期+2ヵ月または3ヶ月(給付制限)が経過した後 【受給資格決定日から7日+2~3ヶ月後】 |
通常であれば2~3か月後から支給開始になるところを、受給資格決定した待期期間後すぐ受給できるのはとてもありがたいですよね!
受給要件が緩和される
特定理由離職者は、通常の失業手当受給者よりも受給条件が緩和されます。
雇用保険について通常は離職日以前の2年間で12ヶ月以上加入している必要がありますが、特定理由離職者は1年で6か月以上加入していれば雇用保険を受給できます。
所定給付日数が長くなる場合がある
特定理由離職者は、失業手当がもらえる日数(所定給付日数)が通常の受給者よりも長くなることがあります。
被保険者であった期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
全年齢共通 | 90日 | 120日 | 150日 |
被保険者であった期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 150日 | 180日 | ー |
30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
これにより、通常よりも再就職するまでの期間に余裕がもてます。
国民健康保険料が軽減される
特定理由離職者は、国民健康保険料の減免を受けられます。
前年の給与所得を、その30%に換算して国民健康保険が軽減されます。
健康保険料まで軽減されるんですね!助かる~!
注意点としては、自分で市区町村に届け出なくてはなりません。
特定理由離職者として認められたら、国民健康保険証と雇用保険受給資格者証をもって市区町村の国民健康保険担当に行きましょう。
具体的な軽減額についても市区町村に問い合わせることで確認できます。
詳しくは厚生労働省のサイトをご確認ください。
特定理由離職者のデメリット
手続きに手間がかかる
特定理由離職者として認められるには、通常の手続きよりも工程が増えるので手間がかかります。
医師に傷病証明書の記載を依頼し、ハローワークに提出の上、担当員との面談が必要です。
私は大した手間には感じませんでしたが、煩わしく感じる人もいるかもしれません。
傷病証明書の記載依頼の出費
主治医に傷病証明書の記載を依頼する際に、発行料がかかります。
診断書の発行にかかる料金は、全国一律ではなく各病院が設定しています。
証明書発行料は1000~4000円程度の病院が多いようです。
いかがでしたか?
手続きの手間や出費などのデメリットもありますが、メリットの方が圧倒的に大きいと思います。
特定理由離職者として失業保険を受給する方法・手続きの流れ
特定理由離職者として失業保険を受給するためには、以下の手続きをふむ必要があります。
必要書類を提出し、求職の申し込みを行います。
オレンジの部分の工程が通常の手続きに加えて必要になります!
ここからは、特定理由離職者の認定を受ける上で必要になる工程について重点的に解説していきます。
通常の失業保険の手続きの流れは以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
医師による診断を受ける
退職前に、病院を受診し医師から診断を受けましょう。
ハローワークで「病気やケガが原因で退職」したことを証明するためには、退職前からその症状に悩まされており、受診し、診断を受けておく必要があるからです。
診断名や診療科に決まりはありません。医師が「今の状態では働けないだろう」と判断するような病気やケガであればOKです。
ハローワークで受給手続き・傷病証明書をもらう
退職し、会社から離職票(雇用保険離職票-1・2)を受け取ったら地域管轄のハローワークへ行きましょう。
受給手続きを行う際に、特定受給離職者に該当する可能性があることを係員に伝えてください。
すると、傷病証明書(病状証明書、主治医の意見書、就労可否証明書、就労可能等証明書の場合もある)がもらえます。
「離職票-2(雇用保険離職票-2)」には離職理由が載っています。
自己都合退職の場合、離職票-2の2ページ目の離職区分が「4D」になっていると思います。「4D」は一般受給資格者(正当な理由がない自己都合による退職)であることを示しています。
ハローワークで特定受給離職者と判断されれば、後に離職区分が訂正されることになります。
私も4Dになっていましたが、その後3C(正当な理由のある自己都合退職)に訂正されました。
主治医に傷病証明書の記載を依頼する
ハローワークで傷病証明書を受け取ったら、退職前から受診している病院へ行き、主治医に傷病証明書の記載を依頼します。
証明書の発行は有料で、1000~4000円程度かかることが多いです。
不備があると、何度も記載依頼することになってしまいます。ハローワークから「傷病証明書の記載見本(記載の方法)」の紙をもらったら一緒に渡しておくと安心です。
傷病証明書の記入は退職日より後でなくてはならないので注意してください。
ハローワークに傷病証明書を提出・面談を行う
傷病証明書を医師に記入してもらったら、ハローワークに提出しましょう。
傷病証明書と担当員との面談を通じて、特定理由離職者に該当するか判断されます。
面談ってどんなことを聞かれるのかな…
話すの苦手だなあ…
私の場合、簡単なやりとりを数分するだけで特定理由離職者として認めてもらえました。
離職票に載っている離職理由や傷病証明書の記載内容、管轄のハローワークによって面談の内容や長さは異なるようです。私は数分でしたが、30分以上面談をすることもあるとか。
担当員が判断していると思われるポイントは以下の3点です。
- 病気やケガが原因でやむを得ず退職したかどうか(正当な理由があったか)
- 現在は就労可能かどうか(病気・ケガは回復しているか)
- 就労可能の意思があるか
「体調が悪くやむを得ず退職したが、現在は回復しており、すぐにでも働けること」をしっかりアピールしましょう!
特定理由離職者として認められれば、その場で離職理由(離職区分)が訂正されます。
雇用保険受給資格者証の離職理由が40(正当な理由がない自己都合退職)から33(正当な理由のある自己都合退職)に訂正され、2か月の給付制限がなくなっています。
失業手当を受給する
雇用保険を受給するための、通常の流れである「雇用保険説明会に参加」→「求職活動」→「失業の認定」を無事終えれば、すぐに失業手当が受給できます。
特定理由離職者の手続きの注意点
退職前に病院に受診し診断を受けている必要がある
「病気やケガが原因で退職した」ことを証明するためには、退職前に医師から診断を受けている必要があります。
病院に受診することなく、ただ「体調が悪く退職した」という事実があるだけでは、退職理由として証明することはできません。
特定理由離職者として認められるかどうかはハローワーク次第
医師からの証明書があり、適切な手続きを行ったとしても、特定理由離職者として認められるかはハローワークの担当員次第です。
「絶対」でないことは、肝に銘じておきましょう。
ただし、うつ病や適応障害などで働けなかった場合は、認めてもらえることが大半だと思います。休職期間があればなおさらです。
傷病証明書(病状証明書・病状証明書・就労可否証明書)の書き方
ハローワークにより書式が異なりますが、以下の点に注意して医師に記載してもらう必要があります。
~証明書チェックポイント~
- 初診日は退職日より前の日付になっている
- 証明日は退職後の日付になっている
- 退職時(在職中~退職日まで)は就労不可能な状態である
- 現在は週20時間以上の就労が可能な状態である
以上のポイントをクリアしていれば、特定理由離職者として認められる証明書になります。
失業保険と傷病手当金は併用できない
特定理由離職者として失業保険を受ける場合、傷病手当金を併用することはできません。
傷病手当金とは、病気やケガによって「働けない状態」の人が受給できる手当です。
「すぐにでも働ける状態」が受給条件である失業保険と併用できないことは明確ですね。
うつ病や適応障害によって休職し、傷病手当金を受けている場合は、働ける状態になってから失業保険の申請をしましょう。その際、傷病手当金の受給は終了します。
再就職先に特定理由離職者だったことはバレる?
再就職活動を行う際、特定理由離職者だったことが再就職に伝わることはありません。
もちろん前職の職場にハローワークから知らされることもありません。
特定理由離職者としての認定情報がハローワークからもれることはないので安心してくださいね。
特定理由離職者として適切な支援を受けよう
失業保険を受ける際には、特定理由離職者としての認定を受けることで支給条件が改善され、安心して失業期間を乗り越えることができます。
うつ病や適応障害などの健康問題によって離職した場合、適切な手続きを行い、失業保険のサポートを受けましょう。
新たな一歩を踏み出すための支援をぜひ活用してくださいね。